
- 1 【疑問1】 音は聞こえるのに「聞き取れない」って?1 【疑問1】 音は聞こえるのに「聞き取れない」って?2 【疑問2】 聞こえにくい音の種類ってある?2 【疑問2】 聞こえにくい音の種類ってある?3 【疑問3】 片耳だけ聞こえにくくなることはある?3 【疑問3】 片耳だけ聞こえにくくなることはある?4 【疑問4】 「聞こえにくさ」は何歳から始まる?4 【疑問4】 「聞こえにくさ」は何歳から始まる?5 【疑問5】 聞こえにくくなる人の特徴ってあるの?5 【疑問5】 聞こえにくくなる人の特徴ってあるの?6 【疑問6】 なぜ自覚しにくいの?予兆はある?6 【疑問6】 なぜ自覚しにくいの?予兆はある?7 【疑問7】 「聞こえ」を維持するには?7 【疑問7】 「聞こえ」を維持するには?8 【疑問8】 「聞こえ」は脳や心に影響する?8 【疑問8】 「聞こえ」は脳や心に影響する?9 【疑問9】 聞こえにくいかも、と気づくには?9 【疑問9】 聞こえにくいかも、と気づくには?10 【疑問10】 「聞こえにくさ」を改善する方法は?10 【疑問10】 「聞こえにくさ」を改善する方法は?

脳や⼼の健康、⽣活の質にも影響を与える「聞こえ」ですが、⽬や⻭の健康はよく話題にのぼるのに、「聞こえ」については実際あまり知られていないのは事実。
今回ハルトモさんアンケートを実施し、「聞こえ」に関する10のギモンをお医者さんに質問しました。
意外と知らない「聞こえ」について

お話を伺ったのは…
日本耳鼻咽喉科医 杉浦彩子(すぎうら・さいこ)先生
1973(昭和48)年、愛知県生まれ。医学博士。98年、名古屋大学医学部卒業。刈谷きこえのクリニック院長。日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会専門医、 補聴器適合判定医、補聴器相談医、騒音性難聴担当医。国立長寿医療研究センター非常勤医師も兼任。
「みなさまご自身の『聞こえ』について、どの程度ご存知でしょうか? 」聞こえる仕組みを教えてくれるのは、「聞こえ」の専門家であり医学博士の杉浦彩子先生です。
「まずは音がどのように耳に入り言葉として理解しているか、説明しましょう。音は、空気の振動として鼓膜や骨を伝わって、耳の奥の蝸牛(内耳)にある有毛細胞により電気信号に変換されて脳へと届き、言葉として認識されます」。

※イラストはイメージです。
【疑問1】 音は聞こえるのに「聞き取れない」って?
「音を変換し脳に伝える有毛細胞は加齢により減少し、再生する事はありません。この有毛細胞には外有毛細胞と内有毛細胞の二種類あり、外有毛細胞の減少では音が聞こえにくくなり、内有毛細胞や脳神経の機能低下により、音は聞こえていても『聞き取りにくい』という状況が生まれます。
また、聞こえにくい状態が続くと、音を情報として処理する脳神経系の機能も衰え、ますます聞き取りにくくなるという悪循環に」。
【疑問2】 聞こえにくい音の種類ってある?
「一般的に高い音、言葉ではカ・サ・タ・ハ行の子音か聞こえにくくなります。会話の一部が聞き取りにくくなり、自分では聞こえているつもりでも聞き間違いが増えます。たとえば『7時(しちじ)』を『1時(いちじ)』と間違えたりします。
また、相手がマスクをしていたり早口だと理解が難しかったりも 」。

【疑問3】 片耳だけ聞こえにくくなることはある?
「右利き、左利きがあるように、若干左右差はあります。左右の聴力が10デシベル(音の強さのこと)の差なら正常ととらえています。その範囲よりも差が大きい場合は、加齢による難聴ではなく、他の耳の病気の可能性があるので、専門医の診察をおすすめします」。
「聞こえにくい」は誰にでも起こる
【疑問4】 「聞こえにくさ」は何歳から始まる?
「ある一定の年齢を超えると、誰しもだんだんと聞こえにくくなっていきます。40歳ごろから徐々に衰え始め、70歳台の約5割くらいの方が日常会話が若干不便になってくるレベルに。
ゆるやかに聞こえづらくなるため、無自覚なまま『聞こえにくさ』が進行してしまうのです。加齢によるものも大きいですが、お仕事などの環境によっても影響のある『聞こえ』。ハルメク世代にもご自身やお友達、ご家族の『聞こえ』について関心をもってほしいと思います」。

※国立長寿医療センターNILSーLSAより
【疑問5】 聞こえにくくなる人の特徴ってあるの?
「加齢が原因になるのはもちろんですが、身体的な条件以外にも、カラオケによく行くとか楽器が趣味な方も結構耳に負担がかかります。イヤホンによる難聴が今後増えることが心配されています。 工場や機械の運転など騒音の多い環境下で働いていることも難聴の原因となります。
あとは性別だと男性がなりやすい。喫煙者や生活習慣病の方では耳に栄養を送る血管が細くなるため、難聴にもなりやすいです。遺伝とも関係するので、血縁者に難聴の方がいらっしゃる場合は気を付けたほうがいいですね」。
【疑問6】 なぜ自覚しにくいの?予兆はある?
「そもそも呼びかけられても聞こえていないから、当人はわからないわけです。周囲が聞こえていないことに気づく場合が多いですね。特にひとり暮らしをされていると、周りも気づきにくく、困っていないので問題が先送りになってしまうことも多いです。
予兆としてよくあるのは、職場や会合など複数の人が同時に会話をしている状況下で、会話が聞き取りにくくなったりしたときは注意が必要です。
また、静かなところで耳鳴りが鳴ったりやんだりするなら、ちょっと聴力が下がってきているかも、という合図です」。
聞こえ不安を感じたら。まずはチェック
「聞こえ」と脳や心、生活への環境とは
【疑問7】 「聞こえ」を維持するには?
「今の聞こえをキープしたいなら、日常的に耳に負荷がかからない生活をしていきましょう。一般的に音の大きさが85デシベルを超えてくると耳に悪影響を及ぼすといわれています。
85デシベルとは、街の騒音くらい。カラオケだと90デシベル程度なので、2時間半を超えると耳に負担がかかってしまいます。お友達とカラオケする方は多いと思うので、2時間で切り上げる等、騒音レベルが高い場所に長時間身を置かないようにした方がよいでしょう」。

【疑問8】 「聞こえ」は脳や心に影響する?
「聞こえにくくなると、コミュニケーションが難しくなり人に話しかけづらくなります。また、上手く聞き取れないと認知負荷といって、脳にも負担がかかるといわれています。
たとえば、外国に旅行に行ったときに外国語が聞き取れないとストレスですよね。聞き取ることに精一杯で、自分の意見まで考えが及ばなくなる。そういう状態をイメージしてもらえればわかりやすいと思います。
またコミュニケーションがうまく取れないことで人間関係のすれ違いが起きると、疎外感や自信がなくなったりして、ストレスを抱えてしまうので鬱を引き起こしたりします。難聴は認知症の最大要因とも言われています」。

「聞こえにくさを改善し、聞こえるようになることで、脳がしっかり活性化し認知機能に影響するという結果も出ています。また、他人と会話がしやすくなり、安心感や自信がつき、精神的にも安定することで、心へのよい影響もあります。
たとえば補聴器装用前後で、何がよくなったか調査した結果、外出の機会が増えた、とか毎日充実感があるとか、生活するうえでのモチベーションがアップするようです。硬いものを食べるようになった、など食べる意欲も増加している結果も出ています。
自信がつくことによって、アクティブに行動するようになっている方がたくさんおられるなと実感しています。ご本人もそうですが、周りのご家族や友人も接しやすくなりますよね」。
「聞こえにくさ」を感じたら…
【疑問9】 聞こえにくいかも、と気づくには?
「ご自身の聞こえの状態を知ることが大切です。まずは年1回の聞こえのチェックをしてみては?『聞き取り』に関わるような子音の聞こえ方など詳しい検査も可能です。難聴の早期発見につながり、早めに対策することができます」。
メガネの田中・聞こえの田中では補聴器に関するさまざまなご相談が可能です。
【疑問10】 「聞こえにくさ」を改善する方法は?
「聞こえにくさを改善するものとして集音器と補聴器が主ですが、集音器は電化製品、補聴器は管理医療機器です。補聴器という名称が使えるのは、厚生労働省から正式に認定されている製品だけになります。
集音器は電化製品なので、家電量販店やネット販売などで簡単に購入できる反面、調整の幅が一定なために使用後の満足度が低く、個々人の『聞こえ』に合わせて調整できる補聴器は、使用後の満足度が高い。集音器と補聴器は似て非なるもの。
また、補聴器には大きな音がした際に耳へのダメージを抑える、いわば安全装置の実装が義務づけられており、より安全に使用できます。逆に集音器を使用すると大きすぎる音が入って、返って難聴を進行させてしまう可能性があります。
ただし、最近は多様な補聴器・集音器が開発される中、集音器と補聴器の境界がかなり曖昧になってきています。選択肢が増えるのはよいのですが、多すぎると何を選べばよいかわからなくなるというデメリットもあります。補聴器相談医、認定補聴器技能者といった専門家と相談しながら、最善の方法を探しましょう」。

いかがでしたでしょうか? 「聞こえ」は脳や心の健康、充実感や幸福度と関係していることがわかりました。
